しんぶん赤旗2009年11月2日【明日への視点】
普天間基地問題―世界は沖縄をどう見ているか 〈田中靖宏〉
熱い焦点となっている沖縄の普天間基地問題が、海外から注目されています。
アメリカやアジアだけでなくヨーロッパや中東のメディアまで、基地の実態と日米両政府のやり取りを報じ、論じています。
特徴的なことは、根底にある日米軍事同盟の問題が正面から取り上げられ、アジア諸国が取り組んでいる自主的な平和秩序づくりとの関連でとらえられていることです。
シンガポールの新聞『ビジネス・タイムズ』10月28日付が掲載した社説は、その代表的なものです。
同紙は、「アジアが鋭い関心で見守っているのは、基地をどこに置くかという兵站問題にとどまらない。
より根本的な問題は日米関係の将来であり、アジア諸国が米軍に過度に依存しないで地域の安全保障体制を築くことができるかどうかだ」と指摘。
結局は「日本がいつ、自国の安全と近隣諸国との関係で真に主権国家としての役割を認められるか」という問題に行き着く、と述べています。
鳩山首相が訪タイで表明した東アジア共同体構想は、積極的な反応を引き起こしませんでした。
アジア諸国は何より根本問題への姿勢を問うているからでしょう。
「中国や新興国の興隆など世界の大きな構造変化の中で、アメリカとの協力関係や負担分担のあり方を見直すことは当然。世界中で行われている」
英BBC放送が23日に流したロシア紙編集長の解説記事は、北大西洋条約機構(NATO)諸国など同盟国も、「アメリカに厄介な問題を提起し調整している。世界の変化を無視し得ないからであり、異議を唱えないアメリカ一辺倒はリーダーシップの欠如と見なされる」と指摘しています。
日本では、政府間合意を反故にすれば日米関係が危うくなる との言説が幅を利かせています。アメリカからは、関係悪化の懸念や恫喝めいた警告ばかりが伝えられます。
こうした主張は、日米関係の専門家など限られた一部の議論です。
米国内にはさまざまな意見があります。
たとえば、全米の地方紙に24日、<日本の選択>と題する論説が載りました。屈指の新聞チェーンである『マクラッチー・トリビューン(MCT)』が配信したもので、「沖縄からの米軍基地撤去を第一の選択にする日本政府からの要請に、アメリカ政府はなぜ好意的にこたえる覚悟がないのか」と問うています。
ゲーツ国防長官が訪日で「他に選択肢がない」と強圧的な態度をとったことを、権限の逸脱だと指摘。
「太平洋にはグアムやハワイといった場所がある」「日本の主権を尊重するやり方で在日米軍のレベルを決める便宜を、なぜ図ろうとしないのか」と批判しています。
多数の地方紙を傘下に持つMTCは、『ウォールストリートジャーナル』など日米関係の専門家ばかりを登場させる主流メディアより、むしろ一般国民に影響力を持っているといってよいでしょう。
米国内の世論でもう一つ注目されるのは、アフガン戦争の泥沼化と米軍増派問題に関連して、急速に高まっている米軍撤退論です。
反戦団体だけでなく保守派の論客も撤退を主張し始めるなか、アメリカ軍の海外駐留そのものを問う論説も出ています。
『ニューヨークタイムズ』の著名コラムニスト、ニコラス・クリストフ氏は23日のコラムで、イギリス軍の駐留に反対する植民地時代の叫びが アメリカ独立革命の原点だったことを思い起こせ、と述べています。
18世紀後半、フランスとの7年戦争終了後も イギリスは米大陸に英軍を駐留させ続けました。
そのうえ、お前たちを守ってやるから「駐留経費を負担せよ」と押し付けた植民地価税。
反対に立ち上がった革命派は「平時における外国軍駐留は人民の権利の侵害」と主張し、その趣旨は独立宣言に盛り込まれました。
こうした論は主流とは言えないまでも、今後はオバマ政権に突きつけられていくでしょう。
沖縄問題を見守る海外の言説を見るとき、いまこそ日本は自主的な外交政策への転換の腹を決めるときだと痛感します。
普天間基地の撤去―海外移設を本腰でアメリカと交渉すべきであり、今がチャンスです。
〈外信部長〉
2009年11月04日
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