2007年05月04日

社説[還暦迎えた憲法]

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070503.html
沖縄タイムス(2007年5月3日朝刊)

社説[還暦迎えた憲法]

平和の理念揺るがすな/「九条」守るために声を 「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義」を基本原則とする憲法が施行されて満六十年を迎えた。

 各種の世論調査でも分かるように憲法を取り巻く環境は変化し、特に「新憲法制定」を公約に掲げる安倍晋三首相の登場で憲法の改正手続きを定める国民投票法案が衆院を通過するなど大きく様変わりした。

 だが、憲法の何を変え、何を残そうとしているのか。私たちは憲法をどう受け止め、暮らしの中で向き合ってきたのか。憲法記念日にあたり、もう一度考えてみたい。

 首相が目指す「戦後レジームからの脱却」は、「戦争放棄」「武力不保持」を打ち出した九条の改正と集団的自衛権の解釈変更を機軸にしている。

 しかし、本紙が行った世論調査では、九条について「改正するべきでない」が二〇〇四年の40%から十六ポイント増えて56%になっている。逆に「改正すべきだ」が29%から24%に減った。

 これは「歴史的な大作業だが、私の在任中に憲法改正を成し遂げたい」と述べた安倍首相への県民の答えと言っていいのではないか。

 沖縄は戦後二十七年間も米施政権下にあり、復帰後も平和に暮らす権利を基地が侵してきた。基地はまた基本的人権をも蹂躙したと言っていい。

 だからこそ県民は九条護持を理由に、平和主義の理念を変えることへの危機感を示したのである。

 もちろん、変えるべきところ、付け足す必要があるところをきちんと議論することに異論はない。しかし九条改正には多くの国民が反対している。その点で首相と国民の憲法観は大きく乖離していると言わざるを得ない。

 首相が立ち上げた集団的自衛権についての憲法解釈変更を目指す有識者会議は、首相と同じ考えを持つ識者の集まりだ。これでは「まず解釈改憲ありき」ではないか。

 憲法は権力を持つ側が安易に変えるものではないはずだ。改正を急ぐ首相に疑惑の目が向いているのをなぜ直視しないのか、疑問と言うしかない。

 「平和の理念」を拡大解釈で揺るがしてはならず、そのためにも私たちにはしっかり声を上げる責任がある。

歴史の事実に目閉ざすな

 共同通信社での憲法研究会で講演した日本国際ボランティアセンター前代表熊岡路矢氏は、イラク戦争とNGO活動の動きを説明する中で、「国際協力では非軍事活動が大事だと確認されている」と述べている。

 紛争解決に求められるのは「当事国、周辺国との折衝や交渉」で、日本は「日本国憲法の理念をむしろ展開すべきだ」と話す。

 日本の安全に必要なのは「戦争できる国」に道を開く九条改正ではなく、集団的自衛権が行使できるよう憲法の解釈を変えることでもないというわけだ。

 アフガニスタンやイラクなどの紛争地域や各地で頻発するテロを考えれば、今こそ憲法前文と九条の理念が輝きを増していると言うべきだろう。

 「権力を持つ人を縛り」個人の権利と自由を守るのが立憲主義の理念であれば、国民には首相に対し平和憲法を順守するよう求める責任がある。

 私たちは日中戦争から太平洋戦争までの歴史の中で多くのことを学んできた。憲法の根幹にあるのは歴史から体感した“平和の尊さ”であり、理念を変える動きについては厳しく監視していかなければならない。

自らの憲法観が試される

 沖縄は十五日で一九七二年の復帰から三十五年を迎える。復帰時の県民の願いは「平和憲法」の下に戻ることにあった。さらに言えば、基本的人権が尊重されることへの希望であった。

 だが実態はどうだろう。米軍基地の「本土並み」という約束がほごにされ、憲法三原則の一つである基本的人権も十分に守られなかった。平和主義だけでなく憲法そのものの理念にかなうものではなかったのである。

 日米安保条約が憲法の理念を踏みにじったのは明白で、それが暮らしの隅々に影を落とし県民を不安に陥れているのは間違いない。

 憲法は確かに不磨の大典ではない。だが、首相の思惑で改憲を急ぐべきものでないのもまた確かだろう。

 改正教育基本法が成立し防衛省もできた。首相が集団的自衛権を模索するいま、私たちが歴史の岐路に立っているのは間違いない。だからこそ自らの憲法観が試されていることを肝に銘じたい。
posted by milou at 11:09| パリ | Comment(0) | TrackBack(1) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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